経営理念

経営理念~【欣求浄土ごんぐじょうど

欣求浄土

私たちは、
ものづくり職人の本道を歩むことで、
新しい世界を切り拓き、
みんなの幸せをつくり続けていきます。

欣求浄土ごんぐじょうど】という言葉は、平安時代の僧侶・恵心僧都えしんそうず源信げんしん)が著した『往生要集おうじょうようしゅう』の巻上大文第二に出てくる言葉です。
意味は、【極楽浄土ごくらくじょうど希求ききゅうする】となります。
もう少しかみ砕いた表現をすると、
【死んであの世に行き、極楽浄土に生まれ変わることを強く願う】となります。

極楽浄土絵図(パブリックドメイン)

ただ、松井製作所の経営理念は、恵心僧都の言葉からは逸脱いつだつした使い方をしております。
強いて言えば、徳川家康が旗指物の文言とした

厭離穢土おんりえど 欣求浄土ごんぐじょうど

の解釈・用法の方が近いといえます。

1560年の桶狭間おけはざまの戦いで、織田信長が勝利を収めました。
敗北した今川義元の部下たちは、散り散りに敗走することになります。
当時、今川義元の部下だった松平元康(後の徳川家康)もまた、追撃する織田軍から逃げることになりました。
家康は、敗走の途中、祖先・松平親忠まつだいらちかただが開基した大樹寺だいじゅじに一時身を隠すことになります。
ところが、敵方に見つかってしまい、大樹寺は包囲されてしまいました。
もはやこれまでと諦めた家康は、第十三代住職だった登誉上人どうよしょうにんに先祖の墓前で自害して果てる決意を打ち明けます。
これを聞いた上人は、家康をいさめます。

【厭離穢土 欣求浄土】

この世は人々が殺しあいけがれている。
これを平和で清らかな世(浄土)に導くのが貴方の役目なのです。

と、説いたとされています。
これを聞いた家康は、祖先の志を知り、奮起して敵の包囲網を突破しました。
そして、その時のことを生涯の志として誓い、軍の旗印として掲げ、天下へ臨んでいったのです。

徳川家康像(フリー写真)

 

 

さて、松井製作所の経営理念の解説に戻ります。
松井製作所は、製造業として誕生した会社です。
その本分は、【ものづくり】です。
人間は、はるかな昔から、道具を作り、使いこなすことで、生き延び、暮らしを豊かにしてきました。

狩りをするために石を割って鋭くとがらせ武器にしたり、魚を獲るために釣り針を作ったり、火を起こして煮炊きするために竈や土器を作ったりしました。
こういったことから、【ものづくり】は、
人々の暮らしを豊かにし、幸福をもたらすために発展してきた】 と考えています。
もちろん、不幸な発明もあり、人類のみならず、自然界も痛めつけるようなものもありました。
が、【ものづくりの志】は、【幸福の希求】にあると信じています。

ですから、『私たちは、ものづくり職人の本道を歩むことで、新しい世界を切り拓き、みんなの幸せを作り続けていきます。』で、その使命(欣求浄土)を【みんなの幸せ】として表現しているのです。
つまり、
私たちは、ものづくり職人という心がけを持ち、今よりもっと良いものづくり(新しい世界)を実現し、みんな(人類)の幸せ(豊かな暮らしの礎)をつくり続けていきます。
という宣言になります。

創業者が掲げる【創意工夫】の精神は、ここに行き着くのだと、後継者として思いを共有し、この経営理念を作成しました。
これを全社員に伝え、共に歩みたい、と願っております。
松井製作所は、零細町工場であり、社会から見れば取るに足りない小さな会社です。
が、松平親忠は地方の小豪族でありながら、志を天下に立て、それが脈々と受け継がれていくことで、やがて、徳川家康の代で江戸幕府という大輪の花を咲かせることが出来ました。
松井製作所も日々の務めを果たし続けていく先に、社会や周囲の人々のお役に立てる大輪の花を咲かせたいと思っております。

工具類写真(フリー写真)

このような考えから、松井製作所では、【浄土】を【人々の豊かな暮らし】と位置付けています。
つまり、【欣求浄土】とは、【人々の豊かな暮らしを希求することが松井製作所の使命です】という意味になります。
私たちの創業地である大東・門真は、古くから湖沼こしょうの地で、庶民が泥にまみれて生きてきた歴史を持っています。
土地の名産品は、【蓮根れんこん】です。
(特に門真蓮根かどまれんこんは有名)
はすは、濁った泥の中にあっても、けがれることなく、清く美しく大きな花を咲かせます。
どんなに厳しくつらい環境にあっても気高く生き抜いて、大輪の花を咲かせる蓮は、仏教において、【泥中の蓮でいちゅう  はす】と呼ばれ、最高位の花として位置づけられています。
私たち松井製作所の全社員が、日々小さな仕事の積み重ねを行なうことで、いつの日か蓮のように大輪の花を咲かせることを願い、仏教用語や歴史上の人物にあやかり、そして、創業者の思いや、自分たちの事業を思い、湧き出てきたのが、この経営理念です。
お客様におかれましては、弊社が、まだまだ未熟で経営理念には遠く及ばないとご評価なさるだろうと存じます。
それでも、志を持ち、前に進まなければ、理想は実現できません。
是非とも、ご指導ご鞭撻を賜り、弊社が志を遂げられるようお導き下さいますようお願い申し上げる次第です。

蓮(フリー写真)


    2020年 4月吉日      
  株式会社松井製作所   
          松井宏彰